『アフリカで数学を教える』

石田弘美/著 四六判並製 定価(1600円+税)

 

評/杉下恒夫・読売新聞社解説部次長 「国際協力プラザ」1999年1月号

 青年海外協力隊員、NGO関係者らが海外での国際協力の体験をまとめた本はいくつもある。これらの書物の共通点は、最初は冒険心と物珍しさからの接触、しばらくして表面だけの信頼関係、そして失望、最後に相手の本質に触れ、異文化交流の真の面白さと難しさを悟るといった筋書きだ。だからといって私はこの手の本が嫌いなわけではない。表面だけの理解で終わり、自分だけがすべてがわかったように書いてある本は論外だが、国際協力の難しさまで悟った人の本にはそれぞれの人生観もあり、興味深い。

 本書もこうしたパターンの本で4年間、協力隊員として四苦八苦しながらアフリカ・リベリアで数学を教えた著者(男性)の体験記だ。構成も「好奇の頃」「有頂天の頃」「苛立ちの頃」「邁進の頃」「容認の訪れ」とよくある心境の変化に沿った章がつながっている。しかし、この本が清々しいのは、200ページ以上にも及ぶ中でお説教や殉教者調の記述が一行もないことだ。それどころか、格下のハウス・ボーイと結構真剣になっていがみ合ったりしているところがあり、それが逆に本気で仕事に取り組んでいる姿に映るのだ。

 最近のテレビ番組に、1週間程度の海外体験をして、別れ際に世話をしてくれた人たちと涙を流し合う“感動番組”が流行っている。だが、本当の国際理解とはあんなものではない。「はじめは好奇心だけで見たアフリカの赤土を最後は感傷的に見るようになった」という著者が記したこの本は本当の国際理解とは何かを教えてくれる。

 

 

 

青年海外協力隊事務局「JOCV NEWS」99.4.1 no.7

 好奇の頃、有頂天の頃、苛立ちの頃、邁進の頃。そして2年目に訪れた容認の時。広告代理店を辞めて、遅刻やカンニング、成績の点数売買が横行するリベリアの高校の教師になった著者の心の変遷が率直に、正直に描かれている。軽快なテンポと本音でつづった教室描写は圧巻! 隊員活動がリアルにわかる。特に協力隊参加希望者にはぜひ読んでほしい。それにしても「あきらめない」著者がその一方でもつ「柔軟性」には脱帽。