ホーム > 「わだつみのこえ」に耳を澄ます

「わだつみのこえ」に耳を澄ます  新刊

五十嵐顕の思想・詩想と実践

「わだつみのこえ」に耳を澄ます

戦没学徒兵の遺書・遺稿「わだつみのこえ」研究に真正直に打ち込んだ五十嵐顕。その研究を心に刻み、伝えることの意義

著者 山田 正行
ジャンル 政治・経済・教育
出版年月日 2018/08/15
ISBN 9784886838445
判型・ページ数 A5・336ページ
定価 本体2,800円+税
在庫 未刊・予約受付中
 

目次

目次

序 章
 第一節 目的
 第二節 志向性―「きけ」ではなく「聴く」、耳を澄ます―
  第一項 問い
   (一)書名と状況
   (二)「きけ」という命令
  第二項 限界状況、態度価値、パンセ
  第三項 五十嵐は「聴く」―軍人であった学者・詩人として―
  第四項 声なき声を聴く―不可視の可視化―
  第五項 国や民族を越えて聴く
 第三節 対立・論争・分裂を超えた次元
  第一項 五十嵐の対立・論争・分裂への沈黙
  第二項 遺書・遺稿をめぐる論争
  第三項 「こえ」を略した者同士の論争
  第四項 木村の遺書・遺稿に関する注意点
  第五項 論争の次元を超えて
 第四節 真(まこと)の知行合一
  第一項 「決死」の「生涯苦吟」
  第二項 白鳥の歌―「五十年かかって、実はおさまりがついていなんだ」―
  第三項  同一化と対象化―「木村の運命が私のであったとしてもおかしくない」―


第一章 我がこととして「わだつみのこえ」に耳を澄ます
 第一節 生と死をめぐる思想と実践―「決死」で闘う生き方―
 第二節 複雑に交錯する諸思想の中でのアイデンティティ形成
 第三節 運命―偶然と必然(一)―
  第一項 「運命」の意味
  第二項 マルクス主義に即して
   (一)マルクスに即して
   (二)アルチュセールに即して
 第四節 反省的で創造的な知行合一
  第一項 内なる主観と外なる客観の止揚
  第二項 下と上の弁証法―土台と上部構造―
  第三項 学問における独立不羈の伝統
 第五節 長年の熟考・反省・苦吟
 第六節 「遠い責任」!の重み
 第七節 「予想外」の「結び」
  第一項 既成概念による「予想外」
  第二項 教育学界の戦争責任
  第三項 卑怯になるよりは―矢内原やガンディーとの関連で―
  第四項 「おさまりがついていなんだ」(再論)
 第八節 「和辻倫理学や田辺哲学」に学んだ「当時の教養」―「軟弱頭脳」


第二章 歴史の思潮と青年の思想形成
 第一節 京都帝国大学の学徒と京都学派
 第二節 思潮の動勢
  第一項 科学革命と産業革命
  第二項 カントにおける科学と浪漫と革命の複合―ルソーの後進、マルクスの先駆として―
   (一)中間と不明瞭
   (二)科学と浪漫
   (三)内心と宇宙の統合
   (四)永遠平和のための暴力革命と民主主義独裁
  第三項 カントからマルクスへ
  第四項 自由と必然・運命―歴史の発展と浪漫―
  第五項 自由と臣従―偶然と必然(二)―
  第六項 運命と希望―偶然と必然(三)―
  第七項 理想を求める運命と浪漫主義―ロマン(小説)を切口に―
   (一)ロマンティクな熱情(パトス)と必然の論理(ロゴス)の複合
   (二)『三銃士』―「一人はみんなのために、みんなは一人のために」―
   (三)『レ・ミゼラブル』―「フランスは血に染まるが、自由はほほえむ」―
  第八項 主体/主観的実践の弁証法的唯物論と相互主観/主体性
   (一)ヘーゲル~マルクス~フッサール―否定の否定の弁証法―
   (二)外と内の弁証法
  第九項 ネクロフィリクなシニシズム(冷笑主義)とナチズム
   (一)「ホモ・ウニウス・リブリ」―自己解釈の再生産―
   (二)ナチとハイデガー
   (三)「現存在」と「世界―内―存在」
   (四)死への気づかいへの呼びかけ―ネクロフィリクな投企/被投企―
   (五)戦争の道義的責任―ナチの「世界―内―存在」としてのハイデガーの言行不一致―
   (六)三木の慧眼
 第三節 三木の知行合一
 第四節 木村や五十嵐の知行合一
 第五節 限界状況における木村の思想形成―田辺の哲学の検討と関連づけて―
  第一項 『哲学通論』の基本的構成と弁証法の弁証法
  第二項 『哲学通論』の論理展開―西田や三木との比較考察―
   (一)ヘーゲルとマルクスの止揚
   (二)神学と哲学の止揚
   (三)神学と哲学に関する補論―「人格」を切口に―
   (四)二項対立の無限の下降―弁証法の図式―
   (五)非合理性への言及
   (六)道徳の位置づけ
   (七)フッサールの止揚の試み
  第三項 京都学派のポテンシャリティ
   (一)京都学派における三木の位置づけ
   (二)世界史と時空間―具体と抽象の弁証法―
  第四項 田辺の戦後における「懺悔」
  第五項 木村の「わだつみのこえ」の分析
   (一)「Marxの下部構造と上部構造」と「絶対否定的自己同一、弁証法的世界」の書き込みの意味
   (二)余白に書き込めたことと遺族に届けられたことの意味
   (三)思想性と関係性―軍隊内「社会科学研究会」―
   (四)「江戸の仇を長崎で打たれた」ことの重層的な意味
   (五)「スパイ容疑事件」と軍事裁判―パワーポリティクスにおいて―
   (六)軍法・軍規・軍紀の問題―近代法治主義との関連で―
   (七)英国の軍事裁判と日本の軍法会議
 第六節 小括―死の超越と愛―
  第一項 田辺から三木へ
  第二項 争いではなく平和のために
  第三項 「わだつみのこえ」研究のために―三木の知行合一の応用―


第三章 五十嵐の「わだつみのこえ」研究と実践
 第一節 京都学派から東大教育学へ
  第一項 京都学派と東大教育学の連動における五十嵐の意義
  第二項 木村批判と自己批判―「わだつみのこえ」に耳を澄まし運命を重ね―
  第三項 木村の主張するpatの意味
  第四項 年長の上官の責任―軍規・軍紀の問題―
  第五項 「運命」の「問に充ちた答」を求めて
 第二節 「生涯苦吟」の苦闘
  第一項 生涯発達を貫く「信義・道義」
  第二項 闘い抜いた生―「死して後、已む」―
 第三節 「継続」と「飛躍」―変化の中の一貫性―
  第一項 五十嵐の「守破離」―日本的な弁証法―
  第二項 帝国主義戦争における「世界最強」の陸軍と平和教育・民主教育―「絶対矛盾的自己同一」の弁証法―
 第四節 ライフ・ヒストリーとヒストリカル・モメント(回転の力学)
  第一項 五十嵐とエリクソン
  第二項 変化する時代と自分自身を一貫する同一性(アイデンティティ)
  第三項 中国共産党の変化
  第四項 五十嵐の沈黙と発達
 第五節 重層的なアイデンティティ形成
  第一項 信愛と闘志の絶対矛盾的自己同一
  第二項 第二区隊長陸軍少尉「壮行の辞」の『雲山万里―南方軍幹部候補生隊の活動と戦後五十年の回顧―』再掲
  第三項 「幼キ時ノ母ノ声」と「わだつみのこえ」
 第六節 五十嵐の生涯学習
  第一項 子供期
  第二項 青年期
   (一)前期青年期―文学派―
   (二)後期青年期―軍人―
     A「いくさ」に臨む若武者
     B 至誠で滅私の闘志
     C 厳正と情義―「軍隊の全重量をささえる鍵」―
     D 矛盾―闘志、浪漫、慾―
     E 知性―日本語、ドイツ語、英語による記述―
  第三項 成人期―マルクス主義教育学者―
   (一)戦後改革と教育研究運動
   (二) 同時代の思想的動勢
     A マルクス主義の台頭
     B 外への平和革命と内での民主集中制
   (三)一九六〇年代における五十嵐の研究や実践
   (四)一九七〇年代における五十嵐の研究や実践
  第四項 老年期―ライフサイクルの完結に向けて―
  第五項 最晩年―「過現未」の苦闘―
   (一)病と闘い、老いと闘い、自己と闘い、歴史と闘う生涯発達
   (二)ライフサイクルの完結におけるライフ・ヒストリーとヒストリカル・モメント
   (三)「老人といえども生きて、強く、耐えねばならない」
   (四)「歴史の『審判』はつづいている」
 第七節 矢内原研究の意義-再審のために-
  第一項 原罪と贖罪―キリスト教への接近―
  第二項 ライフサイクルの完結における矢内原への投企的被投企/被投企的投企
  第三項 矢内原や新渡戸の殖民政策論
  第四項 日本の植民/殖民地統治―多角的な考察のために―
   (一)植民/殖民政策―自立・独立との関連―
   (二)文化政策―東亜協同体における―
  第五項 キリスト教とマルクス主義
   (一)聖書に即して
   (二)マルクス主義によるキリスト教徒迫害―「阿片」をめぐり―
   (三)アルチュセールの同一性におけるパスカルの意味―愛の位置づけ―
   (四)愛―合理性と非合理性の止揚―


第四章 「はるかなる山河」ノートを読み、考える
 第一節 五十嵐の生(life)における日誌や遺稿の意義
 第二節 「はるかなる山河」ノートを読む
 第三節 考える―「何を問題にするか」を承けて―
  第一項 五十嵐の声なき声に耳を澄ます
  第二項 信仰による「純正な生き方」と「学問における真理愛」
 第三項 加藤周一への問いかけ
  第四項 第四項 農民兵士の「わだつみのこえ」―教養の問題との関連で―
  第五項 朝鮮人青年学生への視点―アイデンティティ、忠誠との関連で―
  第六項 エリクソン研究
   (一)重要かつ重大な意義
   (二)アイデンティティの探究―他者分析と自己分析の統合―
   (三)「忠誠」
   (四)「疑似種」
   (五)「非人格的な技術的服従」と死


第五章 ライフサイクルと世代のサイクル―継承、発展、飛躍―
 第一節 「残された企画書」
 第二節 遅筆―高次の知行合一の故―
 第三節 ユネスコ「学習権宣言」との比較―死者と対話して自分の世界を読みとり、歴史を綴り、未来を創る―
 第四節 『五十嵐顕追悼集』とその後
 第五節 東大教育学を軸にした世代のサイクル―宮原~五十嵐~川上―
  第一項 学問・大学の問い直しとアクション・リサーチ―丸山の手記(遺稿)の意味―
  第二項 「勝手に先生の教え子だと思っています」
 第六節 継承、発展、飛躍
  第一項 世代のサイクルのさらなる創生
  第二項 「終わり」に耳を澄ませる―「始まり」のために―


終 章 飛躍に向けた結び
 第一節 飛躍の知行合一
  第一項 論理の飛躍と飛躍の論理
  第二項 「教養は人生に於る戦い」を乗り越えて
 第二節 「おさまり」をつけない「問に充ちた答」
 第三節 意味の探究と価値の創出
  第一項 世界史的意味賦与―「流されつつある血に対する我々の義務」―
  第二項 生ける死者との対話―「絶対的な生命」において―


 あとがき

このページのトップへ

内容説明

戦没学徒兵の遺書・遺稿「わだつみのこえ」研究に真正直に打ち込んだ五十嵐顕。
しかし晩年の五十嵐は「何ら結論的なことを書くことはできませんでした」と記す。
その意味を深く考え、現代においてなお「わだつみのこえ」に耳を澄まし、心に刻み、伝えることの意義を提出する。

このページのトップへ