漢方の効きめ 益田総子

 このごろよく使うようになった薬に、抑肝散加陳皮半夏がある。ずいぶん変な名前だし、漢方薬の本にもあまり載っていない。薬の適応症は「神経、更年期神経症、不眠症、小児の夜泣き」などとなっていて、眠れない、いらいらする症状があるときなどに使うという程度にしかわからない。

抑肝散加陳皮半夏を初めて使って驚くほど劇的に効き、その後いろいろな人に試してみるきっかけになったのが、Hさんである。その時の効き方をみて、精神的な被害を受けてしまっている人によく効くのだということがわかった。その後、理不尽にいためつけられている人はたくさんいて、そういう人に会ったときは、「強力な味方になる」と宣言をしてから、抑肝散加陳皮半夏を飲んでもらうのが、楽になるいちばんの早道だと思うようになった。

 抑肝散加陳皮昨夏の効き方がよくわかるようになってからは、患者さんから被害を聞き出すのが早くなった。自分がいじめられてプライドを傷つけられている話など、だれも自分の口からは言いたくないものである。いつも頭からそれが離れず、助けを求めて誰かにやっと打ち明けても、「そんなこと気にしないで、はね返していきなさい」と逆に叱咤激励されて、ますます落ち込んでいる場令が多い。いやなことは簡単には忘れられないし、繰り返されれば頭にこびりついて、眠れなくもなる。

 不眠に悩んでいる人の中に、いじめられている被害者がかなりいると思う。患者さんの話を聞きながら、「まわりにこわい意地悪な同僚はいませんか?」「その人って、反論すると逆襲してきていつまでも根に持つんじゃない?」などと問うてみると、突然に話の糸口がほぐれて、恨みつらみが堰を切ったように吹き出してくることがよくある。我慢、反省ばかりを教え込まれて育ち、反撃したり異論を唱えるのが苦手な人が被害者になりやすいように思う。

 それにしても、今の日本はいじめっ子がのさばりやすい構造なのだろうと考えるといやになってしまう。

(医 師)