当時、著者の益田総子さんは、それまで中心としていた小児科の分野からの「転向」を余儀なくされていた。知り合いの看護婦に頼まれ、たまたま処方した漢方薬の劇的な効果に驚き、たちまちその魅力にとりつかれてしまったことがそもそものきっかけだった。

「漢方薬になじんでまだ日も浅いのに、使い方に慣れてきたら、この体験をだれかれかまわず伝えたい衝動にかられるようになった」(『不思議に劇的、漢方薬』)

 漢方薬との出会いを「恋」にたとえ、一冊の本にまとめたのが今から9年前の1990年。それはやがて大きな反響を呼び、その3年後に発表された姉妹編『やっぱり劇的、漢方薬』のなかでその感想を素直にこう述べている。

「こんなにまで医者以外の一般の人びとが、漢方薬に期待を寄せているとは思いもしなかったし、現代の医学、医療にこんなにまで不信感を持っているとは考えもしなかった」

 この頃には「ほんの片手間」のつもりだった漢方薬の処方は治療のメインとなり、漢方薬での治療を望む患者も増える一方となった。それも様々な「科」の問題をかかえている大人が、とくに女性がその大部分を占めていた。

 そして今年1999年夏、シリーズ3作目にあたる『〈こころ〉に劇的、漢方薬』を発表。世相を反映してか、

「この4、5年の変化で大きいのは、不眠、イライラなどの精神科っぽい相談がたくさん増えてきたことである」(同書)

 というなか、この本ではおもに精神科の領域とされてきた患者たちに対し、漢方薬と西洋薬を組み合わせ、その治療に取り組む姿が描かれている。また、著者の漢方薬に対する想いも、一般の患者たちからさらに同業の医師たちにも向けられていく。

「漢方薬を使える医師が一人でも多くなればいいと思うようになった」「いろいろな使い方を医者も患者も知ってほしいと思うし、具体的な話でしか漢方薬の使い方は説明しようがない」

 事実、本シリーズは製薬会社から漢方薬のプレセン用として医師に配られることも多く、「劇漢(ゲキカン)」の愛称で親しまれているという。

 

 最後に、およそ10年間にわたって得た漢方薬のノウハウ、自らの体験を振り返り、益田さんはこうも語る。

「私はきっと漢方専門医にはならないだろうと思う。患者としゃべるのが好きだし、泣いたり笑ったりしながら仕事をしていると、しみじみ幸せだと思う。どの年齢も、何でもかんでも、わかることなら相談にのる『なんでもない科』が私は好きである」

 

 

■著者略歴

益田総子(ますだ・ふさこ)

1941年生まれ。67年東京大学医学部卒業。医療生協戸塚病院、横浜なんぶ診療所を経て、現在、「益田クリニック」(横浜市磯子区)で内科・小児科を開業(なお、「益田クリニック」では予約診療に限定しているため、神奈川県外の新しい患者さんは受け付けていない)。

 

参考1:本シリーズで取り扱われるおもな症例

自律神経失調症/高血圧症/アレルギー性鼻炎/不眠症/偏頭痛/耳鳴り/便秘/下痢/生理不順/肩こり/めまい/食欲不振/喘息/湿疹/アトピー性皮膚炎/円形脱毛症/「更年期障害」「不定愁訴」……

 

参考2:「益田クリニック」で使用頻度の高い漢方薬・上位20品目(1999年現在)

1,当帰芍薬散 2,柴胡桂枝乾姜湯 3,半夏白朮天麻湯 4,柴胡桂枝湯 5,人参湯

6,十全大補湯 7,大建中湯 8,温経湯 9,補中益気湯 10,半夏厚朴湯

11,麻子仁丸 12,五積散 13,八味地黄丸 14,抑肝散加陳皮半夏 15,麦門冬湯

16,酸棗仁湯 17,香蘇散 18,桔梗石膏 19,四物湯 20,麻黄附子細辛湯

 

読者の方々からの感想が多数寄せられています。

 

〒「『〈こころ〉に劇的、漢方薬』を読みました。はっきりしない体調の悪さや漢方の具体的な効き目について、大変わかりやすく書かれていました。また、何より、益田先生の医師としての誠実さに感動しました」(愛知県・女性)

 

〒「漢方について遅まきながら土台から考え直して漢方の道に進みたいと思います」(長野県・男性、医師)

 

〒「漢方への考え方がかわりました」(兵庫県・男性)

 

〒『不思議に劇的、漢方薬』、とても興味深く読ませていただきました。ぜひ続編を読んでみたく、(ほかの2冊も)お願いします」

 

〒「喘息で病院へ通っているが西洋薬ばかり処方されているので漢方薬を飲んでみたかった。『〈こころ〉に劇的、漢方薬』がとても参考になった」(岡山県・女性)